TRAVEL COLUMN

渡辺 裕希子=文
ペルーの首都・リマを出発した車は、茫漠たる平原を車窓に映しながら一直線に南下していく。約460km、5時間のドライブを経て辿り着いたのは、ナスカの街。世界遺産「ナスカの地上絵」はその巨大さゆえ、上空からしか見ることができない。最も近づく方法はナスカ発の小型セスナ機に乗ることだと聞き、はるばるやってきたのだった。
快晴の朝、乗り合わせた観光客4人の期待とともに、セスナ機は飛び立った。ほどなくして眼下に飛び込んでくるサル、コンドル、ハチドリ、クモ、宇宙飛行士。機内からでもくっきりと見える地上絵の数々に、歓声が上がる。極端に雨が少ないこの地に巨大な絵が描かれたのは紀元前200年から紀元後800年頃、ナスカ文化の時代とされる。では、何のために? 豊作を祈る儀式を行うためなのか、夏至や冬至などの季節を知る目的なのか、はたまた単にアートとして楽しむためなのか。研究・調査が進んだ今でも、理由は解き明かされていない。目の前にしても謎は深まるばかりで、「宇宙人の仕業」という説もあながち間違いではない気がしてくる。
近年は、気候変動や人々の侵入により、一部の地上絵は消滅の危機にあるという。古代ナスカ人の思いが込もった世界遺産がこれからも永く残ることを、願って止まない。

ナスカの街にはホテルやレストランなどがあるが、観光地とは思えないほど静か。

セスナ機に乗って遊覧飛行。かなり揺れるので、酔い止め薬の準備を。

ナスカへと向かう途上、沿岸部のレストランで味わったペルーの名物料理。新鮮な魚介を使った料理は、日本人の口によく合う。