TRAVEL COLUMN

渡辺 裕希子=文
薩摩と琉球の双方から影響を受けつつ、独自の文化を形成してきた奄美大島。人々は三味線を弾きながら島唄を歌い、特産のサトウキビで黒糖焼酎をつくり、集落ごとの祭りに集うなど、伝統を大切に守り続けてきた。鬱蒼とした亜熱帯照葉樹林には、特別天然記念物のアマミノクロウサギや天然記念物のルリカケスなどの固有種が、今もいきいきと暮らす。約150~200万年前に大陸から分離して以来、周囲の島々と分離・結合を繰り返してきた島は、希少種や絶滅危惧種の楽園だ。
個性的な郷土料理も多いが、その代表といえるのが「鶏飯」。薩摩藩の支配下におかれていた頃、島の住民たちが役人をもてなすためにつくっていた料理で、今では学校の給食にもだされる島のソウルフードだ。ご飯の上にほぐした鶏肉、錦糸卵、パパイヤの漬物、シイタケなどの具材をのせ、丸鶏を煮込んだスープをたっぷりかけていただく。一見するとお茶漬けのようだが、醍醐味は鶏のうま味を凝縮させたスープにある。濃厚なのにしつこさはなく、心身の隅々にまでしみわたる、やさしい味だ。
眩しいほどの白い砂浜とサンゴが息づくエメラルドグリーンの海、日本で2番目に大きなマングローブの森など、見どころが豊富な奄美大島。近年はリゾート化が進んでいるとはいえ、いまだ手つかずの自然が残り、のどかな空気が感じられる。穴場の島旅を目指すなら、今がチャンスかもしれない。

〔鶏飯〕島内の飲食店やホテルなどで提供される名物料理。レシピは店によって異なるので、食べ比べもおすすめ。
写真提供:奄美市

〔マングローブ〕中部に広がるマングローブの森。雄大な景色のなかを進むカヌー体験は、人気のアクティビティだ。
写真提供:奄美市