TRAVEL COLUMN

トラベル×グルメコラム 2019.02 若狭(福井) 〔熊川宿〕小浜と京都の出町を結ぶ鯖街道の中継地点にあり、江戸時代には宿場町として栄えた。風情ある町並みは、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。

海産物の宝庫、若狭地方の郷土料理「鯖のなれずし」

渡辺 裕希子=文

 “街道”と呼ばれる道は数あれど、一度耳にしたら忘れられないのが「鯖街道」。福井県の小浜から熊川宿を経て京都に至る若狭街道には、かつて若狭の海産物を都へと運ぶ行商人が行き来していた。運ばれた物資のなかで特に鯖が有名なことから、近年は「鯖街道」と名付けられ、注目を集めている。
 名物はもちろん、鯖料理。生姜醤油でいただく「浜焼き鯖」や香ばしい「焼き鯖ずし」も人気だが、11月~4月に訪れるなら「鯖のなれずし」を逃すわけにはいかない。若狭湾で揚がった天然の真鯖に塩とぬか、少量の唐辛子をまぶして桶に詰め、1年以上にわたって発酵・熟成を繰り返すと、鯖のぬか漬け「へしこ」が完成する。ここからぬかを落として塩抜きし、ご飯とこうじを混ぜたものを鯖のなかに包み入れたのちに、2~3週間寝かせたものが「鯖のなれずし」。小浜の漁村・田烏(たがらす)地区に伝わる郷土料理で、すしのルーツとも言われる一品だ。「へしこ」に比べて塩気が少ない分、まろやかでうま味が豊か。チーズのような香りが鼻を抜け、ほどよい酸味が広がる。
 リアス式海岸が続く若狭地方は、海産物の宝庫だ。脂の乗った「若狭ふぐ」の鍋やアオリイカの活き造り、天然のウナギやズワイガニなど、季節ごとに楽しみが尽きない。ここでは、漁師が営む民宿に身を寄せて、とれたての海の幸を心ゆくまで味わう美食の旅がおすすめ。三方五湖(みかたごこ)と日本海を見渡す「レインボーライン山頂公園」や、名水百選に選ばれた「瓜割(うりわり)の滝」などの景勝地にも立ち寄れば、食欲とともに好奇心も満たされていくだろう。

鯖のなれずし

〔鯖のなれずし〕なれずしはそのまま食べても美味しいが、アルミホイルで包んで軽く火を通す食べ方もおすすめ。

レインボーライン山頂公園

〔レインボーライン山頂公園〕リフトまたはケーブルカーで山頂に登ると、三方五湖の絶景が広がる。足湯やカウンター席、ハンモックなどがあり、若い人にも人気。