クレジットカードの安全性を守る仕組みとセキュリティ対策
ECサイトの増加やキャッシュレス化の加速により需要が高まるクレジットカード。その一方で不正利用のリスクも懸念されていますが、現在のクレジットカードには安全に利用するためのさまざまな仕組みが備わっています。 日々何気なく使用しているカードに搭載されたセキュリティ機能と、より安全性を高めるために私たちが取るべき対策についてご紹介します。
クレジットカードの盗難や不正利用の被害には保険が適用される
クレジットカードには紛失・盗難保険が付帯されており、不正利用の被害に遭ってもほとんどのケースでクレジットカード会社の補償が受けられます。
また多くの場合、保険が適用されるのはクレジットカード会社に紛失・盗難の届けを出した日からさかのぼって60日前までの損害額です。補償の対象となれば自己負担額はゼロですが、普段から気を配りきちんとカードを管理しましょう。
クレジットカードの安全性を守る仕組み
クレジットカードには、悪質な犯罪からあなたの財産を守るための仕組みが用意されています。
ICチップ
ICチップとはIC(Integrated Circuit=集積回路)を組みこんだ小さなチップです。現在発行されているほぼすべてのクレジットカードには、カード所有者の情報を暗号化して保存したICチップが搭載されています。磁気ストライプ(磁性体の帯)より複雑な構造をしているため、情報を読み取るには専用の機器が不可欠。さらに、ICチップには一般情報と秘匿情報が別々の領域に格納されており、これを解析・再現することは非常に困難であるため、クレジットカードの情報を読み取って偽造する「スキミング犯罪」の被害を防ぐことができます。
また、ICチップ付きクレジットカードに対応した端末を設置している店舗では、サインではなく暗証番号で本人確認を行います。第三者による不正利用を抑制するだけでなく、利便性の点でも大きなメリットといえるでしょう。
ICチップ付きクレジットカードのメリットや、ICチップなしカードとの具体的な違いについては、こちらの記事にまとめています。
ICチップなしとどう違う? ICチップ付きクレジットカードのメリット
セキュリティコード
セキュリティコードとは、主にクレジットカードの裏面に記載されている3桁または4桁の数字のこと。カード内部に記録された磁気情報と違って直接カードに印字されているため、市販の磁気リーダーを使って不正に読み取る「スキミング」で個人情報を盗み出すことはできません。
また、セキュリティコードは伝票などにも決して表示されない「カード会員本人のみが知る番号」です。インターネットのクレジットカード決済時にこの番号を入力することで、利用者の手元にカードがあることを証明すると同時に、第三者による不正利用を防ぐことができます。
ただし、実在の企業や店を装ったサイトに誘導し、個人情報を入力させて盗み出す「フィッシング詐欺」には要注意!身に覚えのないメールに記載されたリンクやサイトは開かないようにしましょう。
セキュリティコードとは何か、どのように確認すればよいか、必要性などについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
クレジットカードのセキュリティコードとは? 確認方法や必要性について解説
3Dセキュア
オンラインショッピングでのクレジットカード決済を安全に行うために導入された「本人認証サービス」のこと。従来の決済システムではカード番号や有効期限などクレジットカードに記載された情報のみを入力していましたが、3Dセキュアに対応しているクレジットカードを利用する場合、それに加えてカード発行会社のWebサイトで事前登録した本人認証パスワードを入力します。
本人認証パスワードは本人しか知らない情報であるため、不正入手したクレジットカード情報を用いる「なりすまし」などの被害を未然に防ぐことができるのです。
3Dセキュアという単語に耳なじみのない方もいるのではないでしょうか。こちらの記事でわかりやすくまとめていますので、ぜひご覧ください。
3Dセキュアとは? クレジットカードの安全性を守る仕組みを解説
ワンタイムパスワード
ワンタイムパスワードとは、クレジットカードを利用した際、その場限りで使うものとして発行され、利用者に通知されるパスワードです。
従来のパスワードは、どれだけ厳重に管理していても、漏洩による不正利用のリスクがありました。しかしワンタイムパスワードは、カードの所持者本人のみに通知されるパスワードです。パスワードの有効期限は通知されてから10分前後など時間が決まっており、それを過ぎてしまった場合は、新たなワンタイムパスワードが発行されるという仕組みになっています。よほどのことがない限り、本人しか知り得ないパスワードであるため、よりセキュリティを強化した対策として活用場面が広がりつつあります。
不正利用検知システム
不正利用検知システムは、多くのECサイトがクレジットカード不正利用を検知するために導入している技術です。
具体的には、該当店舗において利用者がどのようにクレジットカードを利用してきたかデータを収集・分析したうえで、不正な通信やアクセスを予測し、自動的に検知するというものです。ネットワークにおける通信を24時間365日、休みなく監視することで可能となりました。
なお近年は技術の進歩に伴い、AIを導入した不正利用検知システムも増えています。
クレジットカードの安全性を高める使い方とセキュリティ対策
高度な機能を備えたクレジットカードであっても、利用する私たちがセキュリティ意識を持たなければ被害を防ぐことはできません。私たちがとるべき対策には以下のようなものがあります。
クレジットカード裏面の署名欄には必ずサインを書く
紛失や盗難により署名のないカードが第三者の手に渡った場合、勝手に記入されて使われる可能性があります。クレジットカードに署名欄がある場合は、必ずサインをしておきましょう。サインが消えてしまわないように、油性タイプのペンかボールペンを使います。なお、サインの記載方法や使用文字について特に決まりはありませんが、フルネームを漢字かアルファベットで書くケースが一般的です。またサインパネル(署名欄)と実際に店頭で書くサインは同一表記にします。
4桁の暗証番号は他人に推測されにくい数字に設定する
クレジットカードを作る際は、暗証番号の設定が必要です。このとき、忘れてしまわないようにと、生年月日や電話番号などの数字を設定しようと考えがちです。しかし、これらの数字は第三者に推測されやすいだけでなく、不正利用をされたとしても、盗難・紛失保険の補償対象外となる可能性があります。そのため、単純な数字(1111、1234など)は避け、カードごとに暗証番号を変えるようにしましょう。
クレジットカードの貸し借りをしない
カードを利用できるのは、会員本人のみです。たとえ家族や親族のためであるとしても、カードの貸し借りをすることは規約に違反する行為です。本人以外が利用して盗難などの被害に遭っても、保険は適用されません。家族の買い物でクレジットカードが必要な場合は、必ず同行してカードの持ち主が決済するようにしましょう。インターネットショッピングの場合も、家族に代わってクレジットカードの所持者が注文するなどして対処することが大切です。
利用明細は毎月必ずチェックする
不正利用による被害の補償対象となるのは、カード会社に紛失・盗難の届け出をした日から60日前までの損害額となることが多いです。被害に気づかず期間が経過してしまうと、補償を受けることができません。このような事態を回避するためには、利用明細は毎月必ずチェックすることが必要不可欠です。万が一、利用明細に覚えのない支払いや引き落としがあった場合は、速やかにカード会社に連絡をしましょう。
フィッシング詐欺に注意する
悪質なWebサイトにメールで誘導し、クレジットカードの情報を入力させる「フィッシング詐欺」も後を絶ちません。近年は、メールの文面や誘導方法も巧妙になっています。重要な情報の入力を促すメールには、安易に反応しないようにしましょう。
信頼できる業者の暗号化されたページを利用する
ネットショップを利用する際は、信頼できる業者かどうかも見極めるようにしましょう。
見極める方法の一つは、通信を暗号化する技術であるSSL(Secure Socket Layer)をショップが導入しているか否かです。SSLを導入しているサイトの買い物であれば、やり取りした情報を盗まれるリスクは低くなると考えてよいでしょう。
もう一つ、トラブルを防止し、消費者を保護するための法律「特定商取引法」に基づく記載があるかどうかも、チェックしたいポイントです。
高度なセキュリティ機能を備えているクレジットカードですが、より安全に利用するためには私たち利用者がその仕組みを理解し、適切に扱う必要があります。日々しっかりと安全意識を持ち、クレジットカードを上手に活用しましょう。